
プロセスワーク(PW)を通じてみるうつ状態
さて、PW(プロセス指向心理学)というユング派の心理学では、個人の心理だけではなく、関係性やグループの心理を見ることができます。
又、ユングは個人の潜在意識のその下に集合意識というものを発見し、神話や物語に見られるクリエイティブな元型を個人の中に見出しました。更にプロセスワーク創始者のアーノルド・ミンデルは、個人や社会の元で、元型としての色んなロール(役割)が存在することを見出し、そのロールをその都度見つけ出し、意識し活用することを薦めてくれました。私たちの人生を豊かにするためにです。
そうした視点からみると、
うつ病は、個人の『ストレスに耐えられずにうつになってしまった人』という一般的な物語から、
個人の中で『頑張って無理してでも働く人(ロール)』がやりすぎるので、その人を助けるべく『もう無理、と休ませる人(ロール)』がちゃんと出てきてくれた、とも言えます。
(大抵は休ませる人、というよりは、どうしても体が動かない、やる気がでないなどという身体的な困難という形で不都合がでることが多いと思いますが)
又、家族療法的な視点で言えば、
例えば、猛烈に働きまくる親の潜在意識の『しんどい』を引き受けて、子供が代わりに引きこもってくれたり、
家族システムとしてみると納得できるようなバランスが存在しています。そういう場合は、引きこもりの子供を無理やり外へだせばよいというわけではないのですね。(参考:家族療法と引きこもりのテーマ)
ホームレスである人々の存在意義
さて、先日若くて金銭的にも成功しているある有名人(〇〇タリスト)のDさんが、「ホームレスのために税金が使われるのは嫌だ」など諸々の残念な発言をされました。ご本人はホームレスは無価値だという思考があるのかもしれません。
個人の事情や社会がホームレス状態の人を助けることができていないなど、様々な問題があるとは思いますが、それを少し置いておいて、
ここでは、いわゆる、『人の役に立っていない人』の大きな存在意義についてお話したいと思います。
まず、国民の生活水準が高いはずの先進国には必ずホームレスが存在するのではないかと思います。経済社会の中で弱者が締め出されてしまう、という見方もあると思いますが、豊かな国、のはずが、対極の貧しいホームレスの方がいるというのは少し矛盾しているようにも見えますよね。
そこでプロセスワーク流に先進国全体を見ると、
集合意識として、生産することや、優位になること、懸命に働くことが善であるという価値観がものすごく強いため、個人の『しんどいなぁ』、『休みたいなぁ』、『バカンス一カ月とりたいなぁ』が抑圧されます。
そしてホームレスの人たちを象徴的に見ると、『働かない』『役立つことをしない』『なんなら社会にお世話になる』という、個人の『しんどい、もうイヤダ、休む!うつになる』を存在全体で体現してくれている大事な人(ロール)なのです。
そういう視点を初めて聞いた時、私はなんだか目からウロコでした。
<※だからホームレスの方たちへ援助する必要がないと言っているのではありません。恵まれず貧しい人たちを支援することはあってしかるべきだと思います。>
何かしなければ/役立たなければダメだ、という脅しのような価値観
ホームレスを叩く人というのは、いわゆる働くという生産行為をしてないのに存在していることへの嫉妬心を持っているのかもしれません。くだんの有名人のように、そういう方たちは金銭的に豊かであっても心は満たされていないのだと思います。
又ホームレスがむかつく(でも何もしないネコは可愛いからOKー某有名人談)ということは、 『働かざる者食うべからず/周囲に貢献していない人は価値がない』 という発想が背後にあると思います。又その発想や価値観で自分を追い込んで苦しんでる人なんだと思います。苦しんでなければ、ハッピーであれば、自分の払った税金が社会的な弱者へのサポートとして使われることに抵抗は感じないと思います。
この方をカウンセリングするとしたらこの『働かざる者食うべからず/周囲に貢献していない人は価値がない』という価値観にアプローチしていくとよいかと思います。これらの価値観が緩んだり外れたりすると相当ハッピーになっていけると思います。
うつにも意味がある
すべてのものには意味がある、とみるのがプロセスワークです。
そう気づくと、すべてのものが愛おしく有難く、見えてきませんか?
もちろんうつ病もすばらしいギフトなわけですね。
プロセスワーク流のカウンセリングの場合は、うつのエネルギーを感じてもらったりします。
そんなネガティブなものを扱うだなんて・・・と思いますか?
いえいえ、結構素敵でパワフルなものであったりするのですよ。